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いびきは心臓病の危険なサイン?

 いびきは心臓病の危険なサインである可能性があります。いびきは、気道が狭くなることで空気が振動し、音が出ることによって生じます。これにより、睡眠のリズムが乱れ、深い睡眠が妨げられ、心臓に悪影響を与える可能性があります。

 人の睡眠は「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」のサイクルで構成されており、これが一晩に4〜5回繰り返されます。ノンレム睡眠は体と脳が休息する深い眠りで、成長ホルモンの分泌や心臓の安定が得られる重要な時間です。一方、レム睡眠では脳が活発に働き、夢を見ますが、心臓や血圧が変動しやすくなります。

ノンレム睡眠とレム睡眠のサイクル構成

睡眠時無呼吸症候群の症状とは

 睡眠時無呼吸症候群は、レム睡眠とノンレム睡眠のリズムを乱し、何度も呼吸が止まることで深い睡眠が妨げられます。特に、レム睡眠中に筋肉が緩むため、息が止まりやすくなり、症状が悪化します。これにより、日中の眠気や朝の頭痛、夜間頻尿などが現れ、心臓病のリスクを高める可能性があります。

  1. 日中の眠気
     睡眠時無呼吸症候群の患者さんは日中に眠気を感じやすく、疲れた、エネルギーがないと表現することがあります。読書やテレビを見ているとき、昼食後に運転中に寝てしまうこともあります。
  2. いびき、窒息感、息切れ
     睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、いびきや寝ている時の窒息感、息が止まる、口が渇くといった症状を示します。患者さんは自分で息が止まっているとは気づいていませんが、急に息をしなくなって大丈夫かと思って心配していたら、大きないびきをするとベッドパートナーからよく言われます。
  3. 朝の頭痛
     睡眠時無呼吸症候群の患者さんの10〜30%が朝の頭痛、特に両側の前頭部に圧迫感を訴えます。
  4. 夜間頻尿
     睡眠時無呼吸症候群の患者さんは無呼吸で何度も目覚め、そのたびに尿意を感じることがあります。睡眠中に2回以上トイレに行く人は年齢の為ではなく、危険なサインの可能性があります。
  1. 睡眠時無呼吸症候群の身体特徴

    1. 肥満
       多くの睡眠時無呼吸症候群の患者さんは肥満(BMI 30以上)ですが、過体重や普通体重の人もいます。
    2. 狭い咽頭
       顎が小さいこと、扁桃腺が大きいこと、舌が大きいことなどが原因で上気道が狭くなることがあります。
    3. 首やウエストの太さ
       一般的な肥満よりも、首やウエストが太いこと(メタボリックシンドローム)が睡眠時無呼吸症候群と強く関連しています。
  2. 睡眠時無呼吸症候群が心臓病に与える影響

     睡眠時間が5〜6時間未満の場合や8〜9時間超の長すぎる睡眠は、心臓の病気やそのリスクが上がります。質の悪い睡眠では心臓病による死亡率が悪化します。ノンレム睡眠中は心臓や血圧が安定しますが、レム睡眠中は不安定になり、無呼吸が悪化しやすく、高血圧や心臓病のリスクを高めます。
    1. 高血圧
       睡眠時無呼吸症候群の患者さんは高血圧になりやすく、睡眠時無呼吸症候群が重いほど高血圧のリスクが高くなります。睡眠時無呼吸症候群を治療すると、血圧が下がることがあります。
    2. 狭心症や心筋梗塞
       重度の睡眠時無呼吸症候群があると、狭心症や心筋梗塞のリスクが高くなります。これは、肥満や他のリスク要因とは関係ありません。
    3. 心房細動
       睡眠時無呼吸症候群の患者さんは心房細動(AF)になりやすく、すでにAFがある患者さんは睡眠時無呼吸症候群も併発することが多いです。睡眠時無呼吸症候群の治療は心房細動の再発を減らす可能性があります。
    4. 心不全
       心不全の患者さんは睡眠時無呼吸症候群(閉塞型)や中枢性睡眠時無呼吸(CSA)になりやすく、これらの睡眠障害は心不全のリスクを高めます。
    5. 肺高血圧
       中等度から重度の睡眠時無呼吸症候群の患者さんの約20%に肺高血圧が見られ、死亡率が高くなる可能性があります。
  3. 睡眠時無呼吸症候群の検査

    1. 中度から重度の睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合、自宅での睡眠時無呼吸検査(HSAT)により評価します。当院でもHSAT検査を実施しておりますので、ご相談ください。
    2. HSATの結果が陰性、不明確であれば、病院でのPSG検査を行うことが推奨されますので、紹介させていただきます。
  4. 睡眠時無呼吸症候群の治療

    1. 体重が多い人は減量
       肥満は睡眠時無呼吸症候群(OSA)の最大のリスク要因で、改善もできるものです。研究によると、4年間で体重が10%増えると無呼吸指数(AHI)が32%増え、逆に10%減るとAHIが26%減ると報告されています。3カ月~6カ月で10%体重を減らすことを目標にしましょう。
    2. 睡眠姿勢の変更
       仰向けではなく横向きに寝ることで、睡眠時無呼吸症候群の症状が改善されることがあります。
    3. アルコールや鎮静剤の摂取を避ける
       睡眠薬はベンゾジアゼピン系と非ベンゾジアゼピン系に分けられます。ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、睡眠時無呼吸症候群を悪化させる可能性があります。一方、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬は筋弛緩作用が弱く、睡眠時無呼吸症候群患者さんでも無呼吸が悪化せず、むしろ睡眠の質が向上すると言われています。最近では、ベンゾジアゼピン受容体に作用しないオレキシン受容体拮抗薬があり、これも睡眠時無呼吸症候群患者さんに悪影響を与えません。
    4. PAP療法PAP療法の効果
      PAP療法 PAP療法は、睡眠中の無呼吸回数を減らし、日中の眠気を減らし、いねむり事故のリスクを下げ、血圧を改善します。また、勃起不全や胃食道逆流症の症状、糖尿病患者さんの血糖コントロール、生活の質も向上させます。
    5. PAP療法の継続
       PAP療法は一生続く治療であり、完全に睡眠時無呼吸症候群を治すわけではないので治療を継続する必要があります。しかし初期導入時のマスクフィッティングが適切でないと、不快感やリーク(空気漏れ)が発生しやすくなり、継続使用が難しくなります。定期的にマスクフィッティングを見直し、必要に応じてマスクの交換を行うことが推奨されています。

       当院ではPAP療法導入時にPAP療法指導資格を持つ看護師による装着指導を行っており、PAPマスクの選択、マスクベルトの装着チェックなど、継続使用できるための指導を積極的に取り組んでいます。

 以上のように、いびきは単なる睡眠の問題と捉えず、心臓病の兆候として注意が必要です。適切な検査と治療を受けることで、健康リスクを低減することができます。

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